「 一木造り 」

   木像には、「一木造りいちぼくづくり」と「寄木造りよせぎづくり」があります。

   「一木造り」は、文字通り、1本の木で作られた仏像です。
   しかし、差し出した腕のように横になる部分は、木目に逆らうことになるために割れやすなります。
   そのため、腕、手首、足の先、持物などを別材で繋いだものも一木造りとします。
   頭部と胴部が一つの木で造られた仏像を「一木造り」というようです。
  
   古保利薬師の仏像のほとんど(文化財に指定された仏像)は、一木造りです。
   仏像の中には、長年が経過して、手が取れて、繫ぎ目があらわになったものがあります。

             
              日光菩薩              先手観音菩薩

  日光菩薩の左手は、肘ひじから先が横になっているため、別木で繋いでありました。
  先手観音菩薩の胸元には、宝珠ほうじゅを持つ手と合掌する手がありました。
  上にあった合掌する手は、前に出ているため、別木で繋いでありました。
  先手観音菩薩の両側の多くの手も本体に差し込んでありました。
                                  「千手観音立像復元想像図」
  いずれも今は、元の一木のみが残存しています。

  「一木造り」について
  
 ◎久野健著『仏像の旅ー辺境の古仏』に「一木造り」について次の記述がある。
  藤原盛期以後の寄木造と比べて、「平安初期の(一木造り)の作者は、惜しみおしみノミを使って材を掘っていたに違いない。
  これが、木の特性を寄木造の場合よりもはるかに生かす結果となったのである。
  また、寄木造の場合のほり損じは、部分的な損失にすぎないが、一木造の場合のほりそんじは、その大きな材全体を失ってしまう。
  ことに、その土地で霊木として信仰されている木など使う場合には、とりかえしのつかないことも多いであろう。
  それ故、よく「弘法大師一刀三礼の作」などといわれている仏像があるが、
  一刀一刀に三度礼拝するような敬真な態度が要求されたのであろう。」

  ・・・・仏像を彫ることは、僧の修行の一環だったのだろう。

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