住民参加の自治

○ 行政情報のオープン(自治体から住民へ)

 プライバシーに関する情報など特定の情報以外は、全てオープンすべきものです。
 しかし、行政に壁があって、なかなか教えてもらえないというこ
とがあります。そのため、1980年代から、市町村で情報公開条例が制定され、開示請求すれば正当な理由がないかぎり、知る権利が保障れることになりました。しかし、わざわざ役所に出向いて、文書で開示請求するのはたいへんです。
  大朝町の場合、情報公開条例は平成14年に制定されましたが、未だ開示請求の例はないそうです。

行政の情報は、住民のためのの情報です。住民が情報サービスを受けるには、もっと便利で、誰でも、いつでも知りたいと思うことを知ることができる状況でなくてはなりません。

 そのため、請求される前に、行政の側から積極的に情報をオープンにする姿勢が求められるようになりました。この姿勢を行政の説明責任言い、制度や予算・決算などはもとより、問題点やその処理過程などを進んで住民に説明しようというものです。

 この説明責任という考え方は、自治の進んだ欧米から入ってきたものです。
 英語でaccountabilityと言います。
 .住民に説明して納得を得ることは、政治を預かる者の義務とされています・
 既に今日、行政側が説明不十分な時に責任を問う場合、「説明責任を果たしていない。」と言われるようになっています。

     

 ここで、行政の基礎的な第一歩から情報をオープンにしている町を紹介します。
 鹿児島県有明町が発行して各戸に配布している予算と仕事」平成14年度版です
 B4版・白黒・約100ページです。
                                                   

 その冊子の冒頭で、冨田達次町長の挨拶に、「・・・町の予算は本来町民みなさまのものであり、町はこの予算を分かりやすくみなさまに説明しご理解をいただく責任を持っています。・・・」とあります。 



 この冊子には、町の事業や予算、財政状況など、町行政の全てが体系的にコンパクトに紹介されています。
  町民は、いつでも知りたい時に知りたいことを、ざっと知ること  ができます。
 そしてさらに詳しいことは、担当課と担当者が載っているのでお茶の間から、あるいは職場から適宜、電話で問い合わすことができます。
                                     
 
 

 
例えば、40ページ上段に保育のことが(抜粋)、 


     

 町の保育行政をざっと見ることができます。
 さらに役場では、第二次、第三次の資料・・・・例えば、保育所の概要、、運営方針、料金、送迎の方法、、申込み手続きの方法、さらには保育所の経営状況などの資料、
 また、児童手当の場合、支給状況、所得制限限度額の例示などの資料を作成し、ロビーや行政資料室、図書館などに備え付け、あるいはホームページに載せます。


 担当者にお願いしなくても見れる状況が大切です。
 お願いして見せていただくと、負い目になり、言いたいことも言えなくなるからです

  さらに1例、66ページ下段に、農道整備工事のことがあります。





 

 よくあることですが、工事が始っても、地権者、地元、工事関係者以外の者には、
工事のことがよく分かりません.

 町内の工事でも,行かない所の工事のことは分かりません。

特に合併したら、
 「
あの旧町では大きな工事をしているのに、我々の要望を取り上げてくれない
 といった誤解や不満が出る恐れがあります。

もし合併後、このような冊子があれば、新町全体の工事や事業がわかり、各地区で行われているいろいろな事業を総合的に理解し、納得できるでしょう。


 合併の不安・・・本庁が遠くなる、担当者を探すのがたいへん、
       知らない人が支所に転勤して来る、町全体のことがわからない
          ・・・という場合も、安心です。


  有明町の冊子をさらにご覧になりたい方は、  リンク先の  有明町の冊子

  このような冊子を作成して住民に配布した最初は、8年前で、北海道のニセコ町とのことです。
  その後、福井県今立町、石川県羽咋市などが作成しています。
  その他、作成されている市町村がありましたら、お知らせください。


  

 
  
 その後のことです。
 私は広島県の大朝町議会議員に出させていただき、このような冊子の必要性を説きました。
 折りしも町の合併時期に当たり、合併により誕生する北広島町は大きな町になり、役場の組織も複雑になることから、合併後には先ずもってこのような冊子を作成するようお願いしました。
 そして、新町で作成されたのがこの冊子です。

 しかし、この冊子は、町の組織、担当課、各種行政制度などを紹介したもので確かに便利ですが、有明町やニセコ町の冊子のように、予算の使途、税収などまでも掲載したものではありません。




 この冊子と同時に、ホームページ版を作成し、詳しいことや手続き(申請書などの様式も入れる)などはリンク先で二次的、三次的に追加説明します。
 そうすれば、自宅に居ながらにして多くのことを知ることができ、役場に行かなくても、電話やEメールで相談、質問、申請等の手続きが可能になります。
 
合併して役場が遠くなる、ということもないでしょう。




 ともかく、権限や財源が移譲された

   分権の時代は、受益と負担(税)を併せ考えなければなりません

そのためには、どこにどれだけ予算が使われているか、行政全体がわかる資料が是非とも必要です。
 そして住民は、平素から、税金がどのように使われているか、
行政全体を見る力を養って行かなければなりません


 既に教育の分野では、説明責任の原則に立った、新たな取り組みが始っています。
年度始めに、学校は保護者や地域に、シラバス(年間学習計画)や生活指導など具体的な目標を示します。そして年度末に、学校が自己評価し、保護者や地域の意見を聞き、次年度に生かします。
  
 広島県では、説明責任の見地に立ち、予算の編成過程の公開を、9月補正予算案の編成過程から実施したいとの意向を示しています。(’03.7.7 知事の記者会見にて) 



        


 
      
  住民投票の活用

       
 従来から、住民の意向を知るため、アンケート調査の方法が活用されました。
 そして、平成8年に新潟県巻町で原子力発電所の建設をめぐって住民投票が実施されて以来、自治体が議会の議決により、個別案件ごとに住民投票条例を制定して住民投票を実施するケースが見られるようになりました。

  しかし、それらは、原子力発電や産業廃棄物の処理など広域的な問題に対して、地域住民が迷惑施設として反対の意思表示のため活用されるケースが多く、住民投票制度自体にとって不遇なことでした。
  本来、住民投票が健全な発展を遂げるためには、その地域に限った問題について活用されることが望ましいと思われます。

 
 明治以来、日本は、議員を選んで任せる間接(代表)民主制を建て前とするため、住民投票制度の導入に抵抗感があり、法制化が遅れました。
 しかし、直接、住民の意思表示を問うことが、正に「民」が「主」となる最も民主的な方法であり、間接民主制は便宜的な次善の策と考えるべきものです。
 ようやく平成14年3月に合併特例法が改正され、住民投票制度が法律として登場しました。 しかしそれは、合併協議会の設置が議会で否決された場合に、首長の請求により住民投票にかけることができる、首長が請求しない場合には有権者の6分の1以上の署名による直接請求によって住民投票にかけることができるというものです。ですから、住民投票にかけられるのは合併協議会の設置であって、合併そのものの是非は従来どおり議会で最終決定されます。住民投票で可決されても、法は「議会で議決したものとみなす」という表現になっており、間接民主制の建て前は崩していません。


 そこでここでは、思い切って、住民投票制度をどんどん活用している先進国の事例を紹介してみたいと思います。
 
それは、アメリカ合衆国はワシントン州のキング郡における住民投票の実際です。
 アメリカ合衆国では、市や町は郡の中にあり、マリナーズのイチロー選手が活躍しているシアトル市は、このキング郡内にあります。
 住民投票の実際については、「朝風」第4号に掲載していますので、そちらをご覧ください。

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