地方自治団体(市町村)の自立


○ 地方分権一括法の制定
                                  
 国と地方自治体が対等・協力関係の理念のもとに、住民に身近な行政はできるかぎり身近な地方公共団体において処理することを基本として、権限の所在を見直し、今後の地方分権の推進に備えるため、平成11年7月に、関連改正法律475本からなる地方分権一括法が制定され、翌年4月に施行されました。
  自治事務    地方自治体本来の事務
  法定受託事務 国の事務で、法律に基づき地方公共団体に処理を委託された事務


 合併を契機に、大幅な権限移譲が期待されますすが、当面の合併推進方針には、その具体策は示されていません。


 中国新聞(’03.7.4朝刊)によると、山口県では、「合併で行財政基盤が強化される市町村の規模や能力に応じて、権限を積極移譲。合併のメリットが発揮できるようにするのが狙い。」として、「まとまった行政分野の手続きが同じ市町村内で完結できるよう」権限を一括移譲する「パッケージ方式」を打ち出しました。
 現在のところ、「・・・対象となる法律の数で見た移譲率は・・・」山口県が17.4%、全国平均が13.7%ということです。
 広島県も、人口規模等に応じて、ステップアップ方式、特定分野拡充方式といった方法で推進するとのことです。

  都道府県から市町村への権限移譲も、順次進められつつあります。


○ 三位一体の改革
                 
                   国庫補助金  地方交付税    税源 
                 (削減)    (見直し)    (移譲)
 
 自主財源の拡充のため、この
三点を一体的に改革しようというものです。
      
(補助金削減のみ、交付税圧縮のみ、の改革では地方は困ります。)

 
小泉首相のもとで、経済財政諮問会議は「骨太の方針」第三弾を答申しました。

   その骨子  2006年度までに、補助金を4兆円程度削減し、(所得税といった)基幹税を基本に、その8割程度を税源移譲する。義務的事業については、徹底的に効率化を図り全額移譲する。
 地方交付税は総額を抑制し、財源保障機能を縮小する。
 地方税を充実、課税自主権の拡大を図る。 

 国の補助金や負担金は、約20兆円あります。その性質上、税源移譲できないものもあるでしょうが、今回の4兆円で充分とは言えないでしょう。

              

 ちなみに、合併予定の山県東部4町の財政(歳入)状況は次のとおりです。   

      平成13年度普通会計決算状況        単位:億円・( %)は構成比

  町別 歳入総額   地方税  地方交付税 国・県支出金
(補助負担金)
 地方(町)債
 大朝町   37.4    3.1
 ( 8.3%)
  17.2
 (46.0%)
   6.3
 (16.8%)
   5.0
 (13.4%)
 千代田町   60.8   15.4
 (25.3%)
  22.7
 (37.3%)
   7.3
 (12.0%) 
   5.2
 ( 8.6%)
 芸北町   38.7    4.1
 (10.6%)
  18.6
 (48.1%)
   8.0
 (20.7%)
   4.4
 (11.4%)
 豊平町   41.0    3.9
 ( 9.5%)
  18.9
 (46.1%)
   8.3
 (20.2%)
   5.7
 (13.9%)
   計  177.9    26.5
 (14.9%)
  77.4
 (43.5%)
  29.9
 (16.8%)
  20.3
 (11.4%)

             (平成14年度 山県東部合併推進協議会 住民説明会 配布資料から)

 自主財源の地方税は、主として住民税や固定資産税です。
 
とても自立しているとは言えない実情です
     参考までに、全国平均は、平成12年度で、地方税35.4%、地方交付税21.7%、
    国庫支出金14.4%です。
     但し、国ベースの資料ですから、都道府県分を含み、県等の支出金は別外です。

                                    
 
国から配分される地方交付税に大きく依存しています。
 交付税は、地方交付税法により所定の方法で算定された額を、国は地方公共団体に財源保障する仕組みになっています。
 その財源は所得税、法人税、酒税ですが、近年、税収不足のため、国は
借金で補っている状態です。
 さらに平成13年度からは、国からの
不足分を地方自治体も借金(臨時財政対策債)して補うことになりました。今後、地方がこの借金を返済する際に交付税で補填することになっていますが、今でさえ交付税財源が足りないのに、果たして国は補填できるのか、借金を借金で補う危険な事態になっています。
  大朝町の臨時財政対策債:13年度当初予算5090万円   14年度 同 1億3170万円
                   15年度 同 2億1900万円
 このような窮状から、交付税の見直し案が俎上に上ってきた訳です。

                                      

 国庫補助負担金は、各種の(地方自治体への)補助金や負担金があります。


補助金の弊害と財源移譲の目的
 
 1 国の補助金は、もらったら得という気持ちになります。
   各地が競って国へ依存し、国の財政悪化の一因となりました。
 2 制度上の制約があり、地域の総合的な視点から、行き届かない面が生じます。
 3 例えば、こんなことがあります。
    住民     「この事業を是非やって欲しい。」
    自治体職員 「わかりました。適当な補助金を探しまして・・・・」

    
住民     「制度上難しいということですが、是非やって欲しいのですが・・・」
    自治体職員 「わかりました。国や県に相談しまして・・・・」

  
 そう言われれば、住民は、ただ「よろしくお願いします。」と言うほかありません。
   
地域住民や自治体職員の自由な発想や責任感を疎外しています。

 これが税源移譲されたら、どうなるでしょうか。財源が足りなければ、税率を上げるか、経費がかからないよう、自治体の責任でいろいろと発想し、工夫するでしょう。
 このように自治団体として自立することによって、住民自治の道が開けるのです。

 具体的に、どの補助負担金を削減して税源移譲するか、今後の課題になります。
 再三俎上に登る教職員給与が地方自治体の責任となれば、過密地では学級定員数減、過疎地では少人数学級の小規模校の存続について、財政的な見地から再検討を余儀なくされるでしょう。
 同じような問題は、いろいろと出てくると思われます。正に、
自治の営みです。
 
                    

 これらの改革によって将来の地方財政がどうなるのか、1町でやって行けるのか、不透明なため、合併の是非について判断が難しいところです。
 税源移譲、交付税の財源保障機能の縮小といった「骨太の方針」から地方財政の将来を考えると、自治体自身による税収の増強策が大きな課題となり、その対応が可能な規模が望まれます。
 税を生み出す地域経済をいかに発展させるか、地域経済対策が重要な政策となります。

 一つの経済圏という見地から、千代田を中心とする山県東部4町の合併は止むを得ず、必要と思われます。合併によって、広島市郊外の北の発展可能地として、位置的にも三次経済圏に劣らない、山県東部経済圏の育成・強化が急務となります。

 

(ご参考)
 スイスは、その昔、山間僻地にあって、たいへん貧しい地域でした。
 生活のため、外国の雇われ兵にもなりました。それは「血の輸出」とも言われました。
 そのため彼らは、積極的に技術を持ち帰り、地域ごとに産業を興しました。
 機械製造、時計、繊維などの産業がそれです。
 谷合の村々に、農業や食品加工、観光など地域独自の産業が育っており、資源に恵まれない山間のスイスが強い経済力を保っています。
 スイスは日本の東北地方よりも小さい国ですが、そのような歴史経過から、22の州、
3000に近い市町村からなる、地方分権に徹した国です。

 日本の場合、中央集権だったから地方が救われたのか、中央集権だったから過疎・過密になったのか・・・・・・分権してどうなるのか、これからが正念場です。


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